在宅医療の問題点



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在宅医療のメリット 本人の精神的安定と、家族のQOLの向上 では在宅医療のメリットについて記しましたが、その普及を妨げる問題点(デメリット)についても、主な点を整理しておきましょう。


現状特に地方において、在宅医療を中心としたシステムへの移行に立ちはだかる、以下の問題があります。


(1)在宅医療の普及を妨げる、在宅医のなり手不足 で述べたとおり、在宅医サイドの「24時間365日体制」を文字どおり実現するのが難しい。


連絡体制とスピーディな往診ができるなら最低限の環境は作れますが、それにはどうしても「複数名から成る、連携のとれた在宅医療チーム」が必要になります。

在宅医療のみならず、施設医療においても医師や看護師が不足している地方では特に、その実現が難しくなっています。

とりわけ在宅医療への志が高い開業医の場合、自前の経営資源だけではほぼ不可能なため、外部のコールセンターなどを活用した患者・家族との確実な連絡体制づくり、そして地域の医療機関や他の専門医との医療ネットワークづくりなどが、今後の重要なテーマとなってくるでしょう。


(2)在宅医療は地域の病院(高次機能病院)とセットになってその真価を発揮できるが、病院へのスムーズなアクセスの確保が難しい地方・地域がある。


複数の病気を持つ高齢者は少なくありませんが、慢性疾患で在宅で医療や介護を受けている状況下で突然、急性疾患の症状を呈することがあります。

認知症患者が脳出血を起こしたり、老衰で寝たきりの患者が吐血や肺炎を起こすケースなどが、それに当たります。

脳梗塞や心筋梗塞等では、治療においてまさに一分一秒を争う状況に置かれることがあります。

このような緊急時は、急患の受け入れが可能な体制と設備を有した「高次機能病院」が近くにあるか否かが、生死をわけることにもなりかねません。


比較的すみやかに救急搬送が行える程度の圏内に高次機能病院があること、そしてこれら高次機能病院とかかりつけ医との間で適切な医療連携ができることが、必須になってきます。

高次機能病院は都市圏に設置され専門医も集中していること、加えて地方では中央の病院までの搬送時間の長さが障壁として横たわり、都市圏との治療格差を生じさせています。

地方の自治体はこれを解消すべく、ドクターヘリの導入や待遇向上による医師や看護師の充実をはかるべく努力していますが、患者側が妥協して老後は高次機能病院のアクセス圏内に居を構えない限り、在宅医療においても不安が拭いきれないのが現状です。


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(3)在宅医療を選択する際に起きる、患者の家族サイドの問題。特に、家族間で異なる意見や立場の調整、看取りに直面した時の心理的動揺・家族の介護疲れなど。


本人および直接に世話をする家族が納得し在宅医療を始めたとしても、時間がたち病状が変化するにつれ、家族の心理も変化してきます。


とりわけ認知症のように症状が進行性の場合、家族がいつも冷静に対応するのが難しくなります。また、当初看取りにおいて延命治療はしないことを関係者で十分話しあったにも関わらず、本人の様態が急変して苦しむ姿を目の当たりにして動揺してしまい、入院治療に切り替える家庭も少なくありません。

緊急時の対応や自宅での看取りについて、家族の中で意見が完全に分かれてしまい、紛糾することも珍しくありません。遠くに住んでいて事情に疎い兄弟などが頑なに入院治療を譲らず、結局在宅医療そのものを断念するケースもあります。

また在宅介護と同様に、世話をする家族の介護疲れ・介護うつ等の問題もあります。

在宅介護 現状の問題解決には家族の覚悟・ゆとり・工夫が必須

自宅で亡くなることを望む高齢者が多い中で、在宅医療を続け看取りまで完結させようとするならば、家族の冷静な状況判断力と相当の覚悟が必要になります。


これはどちらが正しいという話ではありませんし、本人の病状(終末期か否か等)や置かれた状況によっても異なってくる、難しい問題です。

在宅療養支援診療所や在宅医など外部からのアプローチによる解決が、難しい話でもあります。

在宅療養~技術・費用面以外で知っておくべき、2つのこと


ひとつ言えるのは、本人と家族がのちのち振り返って後悔することのないよう、担当在宅医とも十分に話しあい日頃から思いを共有し心を練っておくことが、非常に大切だということです。

自宅での看取りに経験と識見を持つ在宅医に巡り会えたのならそれは大変に幸せなことですが、残念ながらまだレア・ケースなのが現実です。


在宅での医療と介護に関わる日々の問題は、もはや医療機関や医師に丸投げできない、家族の一人ひとりが学び考え決めていかなくてはならない時代であることを、ぜひ心に留めておきたいものです。


次の記事は「退院後の在宅医療~問われる本人・家族の意思」です。

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