在宅医療 普及のキーポイント~訪問看護師の増加



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在宅医療を担う人々と、その仕事 でご説明したように、在宅医療の中核を担う存在が「訪問看護師」です。

日本で就業している看護師は、全国で102万人弱(2012年現在)。その中で「訪問看護師」の数は、わずか3万人程度(2014年現在)に過ぎません。

国が今後の中核的政策として進める「在宅医療の強化」を考えあわせれば、その供給数は、現時点ですでに大きく不足しています。

「訪問看護」というサービスがほとんど機能していない市町村も、現状決して少なくないようです。訪問看護の求人に対し、希望する看護師の割合が圧倒的に少ない状況であり、需要と供給の大きなミスマッチが生じています。


在宅医療がなかなか普及しない環境下、在宅医療に関する自らの経験や知識不足から二の足を踏む看護師が少なくないことも、その理由の一つでしょう。

病院勤務なら、万一の時は医師やスタッフと相談しすぐに連携できる体制が用意されていますが、在宅医療では患者と1対1で向き合いつつ、自ら判断しなくてはならないケースがどうしても増えてきます。


また訪問看護の現場経験を積みたくとも、自分の勤務先が在宅医療にほとんど対応していない場合、本人の意思や努力だけでは難しいでしょう。

急性期病院では相変わらず看護師の不足感が強い状況が続いているため、勤務環境やキャリアを大きく変えてまで、在宅医療にチャレンジする動機が乏しい、といった心理的要因も大きいでしょう。


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もっとも少しづつ、変化のきざしは見えてきています。

医療機関では長時間勤務や夜間勤務がどうしても多くなりがちなため、「より良い勤務環境のもとで働きたい」という看護師の潜在的な欲求には、強いものがあります。

勤務時間と待遇のバランスなどが納得のいくものであれば、訪問看護師を志す人は、今後必ず増えてくるでしょう。


また2014年4月に実施された「7対1入院基本料の見直し」などの診療報酬改定により、特に急性期病院における重症患者数に対する「看護師の配置人数」などが厳格化されました。

平成26年度診療報酬改定の概要【PDF】(厚生労働省)

今回の診療報酬改定に伴い、医療機関側もスタッフの配置換えや人員調整をして対応する方向へと誘導されることから、現在急性期病院に勤めている看護師の流動化(配置換え・リストラ等)も、これから目立ってくるものと予想されています。


地域包括ケア・在宅医療の推進といった大きな流れのもと、「在宅医療の分野で本格的なキャリアを積もう」と考える訪問看護師の絶対数が、今後増えていくものと期待されています。

しかしその前提条件として、国の制度的な後押し・医療機関の在宅医療に対応する組織体制の再編・在宅療養支援診療所の増加や質の向上などが急ピッチで求められていることも、また確かです。

現在70万人以上いるとも言われる、看護師資格を有しながら育児など個人的理由のために退職し未就業となったままの「潜在看護師」にも、再び医療の現場に戻ってきてもらえるよう官民協力して職場環境を整えていくことも必要でしょう。


在宅医療を望む患者およびその家族にとっては、上述の変化は極めて緩やかなものに見えて、もどかしさを感じるかもしれません。

しかし在宅医療を全国的に拡げようとする大きな潮流があることは確かなのですから、サービスを受ける側としても、「一人でも多くの優れた訪問看護師が地域に根付くよう、協力しながら育てていく」といったマインドを持つようにしたいものです。


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