在宅療養支援診療所(在支診)とは その概要と動向



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在宅医療の検討にあたってまず大切なのは、訪問診療を行ってくれる医師を探すことですね。

それはすなわち、自分の住む地域で在宅医療を行なう医師や看護師が所属する医療機関を見つけることです。

その要となるのが「在宅療養支援診療所在支診)」、あるいは「在宅療養支援病院在支病)です。


「在宅療養支援診療所(在支診)」は、2006年(平成18年)に制度化された、以下の要件を満たすことを条件に認可される医療施設です。一般の診療所に比べ、診療報酬が高く設定されています。


・患者の担当医または看護師が、患者とその家族に24時間連絡を取れる体制を維持する。
・患者の求めに応じ、24時間往診の可能な体制を維持する。
・担当医師の指示のもと、24時間訪問看護のできる看護師あるいは訪問看護ステーションとの連携体制を維持する。
・緊急時に連携する保険医療機関で検査・入院時のベッドを確保し、その際に円滑に情報提供がなされること。
・在宅療養についての適切な診療記録管理がなされている。
・地域の介護・福祉サービス事業所と連携している。
・年に一回、在宅で看取りをした人数を地方厚生(支)局長に報告する。


通常の診療所や病院では、何かあっても診療時間外で連絡がつかなければそれまでです。在宅療養支援診療所は「24時間必要に応じて、他の病院や診療所・薬局・訪問看護ステーション等との連携を図ることができる」点に、その強みがあります。


2010年の在宅療養支援診療所の届出数は12,487件となっており、3年間ほど横ばいに近い微増傾向が続いています。人口10万人あたりでみると、大阪府・広島県・長崎県などが多く、逆に千葉県や富山県などが少なくなっています。

在宅医療の最近の動向【PDF】(厚生労働省)


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さらに2008年度の診療報酬改定時には、在宅療養支援診療所がない地域では病院が在宅医療の担い手となっている現実を踏まえて、「在宅療養支援病院(在支病)」が追加されました。


これは病院を中心とした半径4km以内に診療所が存在せず、かつ一定の条件を満たした病院を、在宅療養支援診療所と同等に評価するものです(2010年度からは半径4km以内に診療所があっても、許可病床数200床未満なら届出ができるようになりました)。

2009年にわずか11件であった在宅療養支援病院の届出数は、まだ都道府県によるばらつきが大きいものの2010年に入り331件と増加、今後も期待されるところです。


在宅療養支援診療所のスタイルは様々で、地方では医師が1人だけの診療所も多いようです。

キャパシティの限界もあり訪問診療に特化せず(できず)、午前中に外来患者の診察をして、午後から訪問診療や往診を行なうやり方を取っている診療所が、全国的にはいまだ主流です。

ただし都市部を中心として、何名かの常勤医師によるチームを擁した強固な在宅医療専門の診療所も、最近は徐々に増えてきています。


この流れに沿い、特に24時間連絡対応が可能な拠点の増加を目的として、2012年度の診療報酬改定時には、「機能強化型」の在宅療養支援診療所や病院が創られました。


「機能強化型」は、さらに「診療所・病院単独型」と「在宅支援連携体制型(他のいくつかの地域の診療所・病院と連携した連絡体制を持つ)」に分かれますが、「診療所・病院単独型」の機能強化型における設置基準においては、以下が追加されています。

・所属する常勤医師が3名以上
・過去1年の緊急の往診実績が5件以上
・過去1年の看取り実績が2件以上


これまでの在宅療養支援診療所は、基本的に24時間連絡がつく体制であればよかったわけですが、そこからの対応がさらに盤石な診療所・病院の診療報酬をアップすることで、その増加と普及を促す狙いがあります。


うがった見方をすれば、日本における在宅医療の普及において、「24時間365日即応できる医療体制」の構築がいかにハードルが高いものであるかを、暗示しているのかも知れません。


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