「総合診療医」とは~専門医制度と、懸念される問題点



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総合診療医」という職種あるいは医師について、皆さんはどの程度ご存知でしょうか?

総合診療医は、いわば「医療の何でも屋さん」です。

幅広い領域を診ることが想定されるだけでなく、様々な診療科に関わる専門性をある程度持ち合わせることも求められています。


そして「総合診療医制度」は一般に、「総合診療(プライマリ・ケア)を専門分野として医師を育成するシステム」と説明されています。

全国でも都市圏を中心に、「総合診療科」あるいは「総合診療内科」「総合診療外来」等の看板を掲げる医療機関が、徐々に増えてきています。

認定施設のご案内(日本病院総合診療医学会)


総合診療医がクローズアップされる理由が「国が全国的な在宅医療システムの整備を急いでいる」ことにあるのは、容易におわかりでしょう。


現在の外来診療における「フリーアクセス(どこの医療機関であっても、保険証一枚を提示すれば受診できる制度)」は、患者にとってもメリットの多い制度です。

と同時に、たとえば二重受診による医療費の増加や薬の過剰処方など、国の医療保険財政にとっての非効率さも指摘されています。

イギリスのように「まず、かかりつけ医を通してから」といったゲートキーパー的役割を総合診療医に担ってもらうべく、これからの地域医療・在宅医療において、その育成が急務とされているわけです。

在宅医療の普及を妨げる、在宅医のなり手不足


日本ではこれまで、一律の明確な定義にもとづく「総合診療医制度」はありませんでした。 いまでも総合診療医の認定基準も学会ごとにバラバラで、専門とする領域にも重複が生じています。

それぞれの医療機関や医師が「総合診療科」「総合診療医」を標榜し、診療の範囲や治療内容にはかなりバラつきがあるのが現状です。


そこで患者側が医師を選ぶときのモノサシとなるよう、2015年度の医師国家試験合格者から「総合診療専門医(以下、総合診療医と略)」が新たに加えられ、これまでの専門医制度が改められることになりました。


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第三者機関の「一般社団法人 日本専門医機構」が認定する新専門医制度が、2018年度(2018年4月)からスタートする方針が示されています。

もともとは2017年度から開始の予定でしたが、研修プログラムの運用にいまだ課題があるとして1年延期されたものです。

【PDF】来年度(平成29年度)およびその後の新たな専門医制度の運用等に関する日本専門医機構の基本的な方針について(日本専門医機構)


総合診療医になるための研修機関・認定施設の絶対数が、現状で少ないことも背景にあるようです。

当初は大都市圏の病院等での研修が想定されていましたが、それでは将来的に地方での活躍を目指す医師の負担が大きくなります。

総合診療医になった後も、個々の医師は常に医療知識のアップデートを行い、その専門性に磨きをかけなくてはなりません。


総合診療科のない病院が大半といった地方の現状に照らしても、地域の病院に彼らの育成に適した指導医がいるとは限りません。

首尾よく総合医療医が養成できたとしても、彼らがそのまま大都市圏に偏在してしまっては、「地域医療を担う在宅医(かかりつけ医)の充実」という本来の狙いが失われる恐れもあります。


かねてより指摘される、都市部では増加する一方で、地方での普及が遅れている「在宅医の地域偏在」という問題を、今後どう解決していくべきか。

新たな専門医制度と、すでに個々に専門医の養成を行っている医療機関との間で内容を統一するための調整なども、今後問題となってくるでしょう。


そもそも専門医の教育・養成において、「まず総合診療ありき」で大丈夫なのか?といった声も、現役の医師の中にあるようです。

特定の専門分野で何年も研鑽をつんだ後に総合医へと転換をはかるなら良いが、最初から総合診療医のキャリアを志向しては「広く薄く」になってしまい、かえって医療技術が身につかないのではないか、という指摘です。

新制度がかえって医療水準・レベルの低い専門医を量産する結果になりかねないのでは?といった懸念は、医師のなかにも根強くあるようです。


「総合診療医」を専門として研鑽を積んできた医師に、家族が患者本人の治療や健康問題を安心して託せるように、国は新制度に対する信頼を確立していく責任があります。


今は耳慣れない「総合診療医」を専門とする医師が、在宅医としてあなたのご家族を担当する日も、そう遠い先のことではないかもしれません。

医師の治療を受ける患者側としても、総合診療医が今後どのようなシステムのもとで育成され、地域の医療機関に配置されるのかについて、今後の動向に関心を払っておくべきでしょう。


次の記事は「在宅医療のメリット 本人の精神的安定と、家族のQOLの向上」です。

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