訪問リハビリテーションとは~概要と今後の課題
在宅医療の主なメニューのひとつとなる「訪問リハビリテーション(以下 訪問リハビリ)」について、ご説明します。
訪問リハビリは、(通院によるリハビリが困難な場合など)主治医が必要と認めた場合に、患者が在宅でリハビリを受けるものです。
指定を受けた病院・診療所・訪問リハビリテーション事業所等に所属する理学療法士(PT)や作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が患者宅を訪問し、主治医の出す診療情報提供書にもとづくリハビリを行います。
主な役割分担としては、理学療法士(PT)は歩行や関節を動かす等の日常生活上の動作、寝返りや起き上がりに必要な筋力維持に関わる運動・マッサージ等を担当します。
作業療法士(OT)は工作・ゲームなどを通じた心身や社会復帰に関わるリハビリ、そして言語聴覚士(ST)は言語障害を起こした患者の発声・発話訓練や、喉頭に障害がある人の嚥下訓練等を担当します。
医療保険が適用される病院のリハビリと異なり、原則として介護保険が適用されます(医療保険が使えたり、両保険が併用できるケースもあります)。
ちなみに病院の外来リハビリと訪問リハビリはごく一部の例外を除き、同一疾患において併用できません。
要介護認定を受けていて、主治医が在宅リハビリの必要性を認めた人が対象になります(40~65歳未満で、16種類の特定疾病の人も含む)。
介護保険の被保険者なのに介護サービスが受けられない場合とは
「一回40~60分のサービス×週2回で、1ヶ月の自己負担額6~7千円前後」が、訪問リハビリの標準的な目安になります。
訪問リハビリの主な目的は2つあり、一つは病院のリハビリと同じく「廃用症候群を防ぐための機能回復」による社会復帰をはかることです。
【PDF】生活不活発病・廃用症候群とはなに?(熊本県理学療法士協会広報誌)
もう一つは特に「終末期医療」に関わるもので、末期がんなどの患者ができる限り自宅で安全・快適に過ごせるよう、本人の生活の質(QOL)を高めていくものです。
たとえばトイレへの行き来等の日常生活上の動作を、少しでも長く自分自身で出来るよう、機能訓練以外にも室内の導線の改善や、福祉用具の利用などに関わる提案が行われます。
訪問リハビリにおいては、最初に話し合いを通じて具体的な目標を立て、適切な運動量がどこにあるのかを、リハビリチームが本人の調子の変化を観察しつつ探っていくことになります。
入院していた病院と自宅との環境が異なることもあり、あくまでその患者の性格・病状・住まいの状況に応じたメニューの組み立てが必要になります。
家族としても、在宅リハビリの開始から改善の兆候が見られるまでは年単位の時間がかかるものと、あらかじめ覚悟しておくベきでしょう。
訪問リハビリチームや家族はもとより、何より本人に、必ず状態が良くなっていくという前向きな姿勢と、続けることへの根気強さが求められます。
リハビリの提供側が現状抱える問題にも、目を向ける必要があります。
在宅医療の問題そのものでもありますが、特に地方においては、訪問リハビリを提供する医療機関や事業所、そして理学療法士や作業療法士の絶対数がまだ少ないのが現実です。
また現行の制度上、重度者をケアしたほうが事業者側の得られる介護報酬が高いため、リハビリによって利用者の要介護度が下がると、事業者の収益減少につながってしまいます。
これでは結果的に、訪問リハビリに理学療法士(PT)や作業療法士(OT)を派遣する事業者側のモチベーションが上がらなくなります。
在宅医療の問題点
これは現行の在宅医療・保険制度に内在する本質的な問題でもあり、国が「予防重視のシステム」への転換を推し進めている中、利用者側としても制度改善に向けて更に声を上げる必要がありそうです。
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