緩和ケアとは~あらゆる病気を対象に、本人の様々な苦痛を取り除く



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在宅医療に関心を持つ方なら「緩和ケア」という言葉はご存知でしょう。

しかし緩和ケア=末期がんにおける終末期医療と捉えているなら、それは正しくありません。

WHO(世界保健機構)が定義するところでは、緩和ケアとは「患者の人生を尊重しながら、痛み・苦痛・不快な症状から取り除き、患者とその家族の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を改善・向上させるための取り組み全般」を指します。

緩和ケアは必ずしも病気を治すことを目的とするものではなく、また「終末期の患者のみ」を対象とした「医学的な治療」に限定されていないことにも、注意が必要です。


薬物療法や放射線治療などの医学的対処ももちろん含まれますが、患者本人が住み慣れた在宅で、できるだけ自らが望む日常生活がおくれるよう看護面でのサポートを提供することが、緩和ケアの大きな割合を占めています。

「本人の症状と苦痛の緩和のため、様々な観点からお世話をする」というのが、最も近いイメージかもしれません。

緩和ケア(兵庫県立大学大学院看護学研究科 地域ケア開発研究所)【PDF】


実際にがん患者の7割が何らかの痛みを症状として持っていることもあり、一般に緩和ケアは"末期がん患者のためのもの"と捉えられがちです。

しかし緩和ケアは病気の種類を限定しておらず、がん以外の病気も対象になります。


今日の緩和ケアは、「治療の初期段階から、治療と並行して適用されるべき」という考え方が主流になりつつあります。治療法が無くなった後に、仕方なく移行するものではありません。

"医学的治療による治癒が望めない"とある日突然に判明したような場合、患者本人も家族もショックを受け、共に「精神的な」苦痛を背負うことになります。

身体的な痛みにとどまらず、メンタル面の苦痛もできるだけ和らげ取り除くこともまた、緩和ケアの目的となります。


「苦痛」は身体的・精神的なものだけと捉えがちですが、他にも「社会的な」苦痛、「スピリチュアルな」苦痛があると認識されています。

社会的な苦痛は家計など経済的事情や仕事上の悩み、そしてスピリチュアルな苦痛は自身の存在が消えることへの恐れや、本人の人生観・宗教観等から派生するものです。


4つの苦痛は「トータルペイン(全人的苦痛)」と総称されますが、患者本人にとってそれぞれの苦痛を感じる時期や度合いも異なります。とりわけ終末期の患者の場合、同じタイミングでいくつかの苦痛が重なって表れることも、珍しくありません。

早い段階から治療と並行的に行いながら、病状の進行過程における緩和ケアの占める割合を徐々に増やしていくことが、その望ましいあり方となります。

上述のWHOの定義においては、これらは「死を早めることも、また遅らせることにも手を貸さない」と表現されています。


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緩和ケアが具体的に提供される場所は、「病院」「緩和ケア病棟(ホスピス)」「在宅」「介護施設(ただし老健など一部の施設は不可)」のいずれかになります。


一般的に病院は「急性期の医療的治療」に主眼が置かれており、緩和ケアへの理解と実施のための体制は、まだまだ十分とは言えません。

また緩和ケア病棟はがん診療連携拠点の指定を受けた病院に併設されるもので、各都道府県に設置されているものの、全国的に見てまだ拠点数が少ない状況です。

ホスピス・緩和ケア病棟はどこにありますか(JHPF ホスピス財団)

その他の病気の場合は入院が難しく、また入院に際しては審査も課されたり待機期間も長くなったりで、誰もが利用できる状況にはありません。


在宅での緩和ケアは、「在宅ホスピス」とも呼称されています。ただしこれまでの「在宅ホスピス」は終末期に提供されるイメージが強いせいもあってか、上述のとおり早い段階から治療と共に開始する「緩和ケア」という呼び方のほうが、一般的になりつつあります。

NPO法人 日本ホスピス緩和ケア協会


在宅で行なう緩和ケアは、「在宅医療そのもの」と考えてもよいでしょう。

とりわけ本人の精神的安定・痛みのコントロール・苦痛を伴わない夜間の十分な睡眠の確保のためには、在宅での療養が最も適した環境と言えます。


国の在宅医療推進を背景として、在宅療養支援診療所(在支診)や訪問看護ステーションの中には緩和ケアの経験を持つスタッフを増やす等、その体制強化を図るところも出てきています。

また在宅の緩和ケア(在宅ホスピス)を専門とするクリニックも、全国で徐々に増えつつあります。


これからの時代、緩和ケアを行なうための場所は、確実に「在宅」が中心になってくるものと見込まれています。


緩和ケアについて、家族の立場から知っておきたいこと に続きます。


次の記事は「緩和ケアについて、家族の立場から知っておきたいこと」です。

ひとつ前の記事は「診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(2)」です。


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