診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(2)



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診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(1) からの続きです。

2014年の診療報酬改定では、「在宅医療の推進」への流れはどのように強められたのでしょうか。

以下に、在宅医療に関わる2014年度改定のポイントを整理します。


今回の診療報酬改定で重視された課題(方向性)は、以下のとおりです:

1. 「高度な医療を担う急性期病院」の機能を明確化・高度化し、長期療養病床との役割分担を明確にする。
2. リハビリ施設やリハビリ病床の充実を評価する。
3. 地域の実情に配慮した入院医療を評価する。
4. 主治医としてトータルに患者を診る病院・診療所を評価する。
5. 在宅医療を担う医療機関を量的に確保、併せて質の高い在宅医療を推進。
6. 医療機関同士、および医療と介護の連携を評価する。



具体的には、新たに項目を設けて診療報酬を付与したり、点数を加算・減算することを通じて、企図する方向への誘導が行われます。


では今回の改定では、どのように評価項目に落としこまれたのでしょうか。

(なお実際の適用にあたっては、医療機関や病気の種類別・あるいは治療の実績件数や医師の配置数にもとづいて、適用条件が別途細かく決められている点にご注意下さい。)


機能強化型「在支診」「在支病」評価の要件となる、緊急往診や看取りの実績(件数)を引き上げ。

●緊急時の往診・看取りを積極的に行い看取りの実績を有する「在支診」「在支病」に対して、評価を新設。

(「在支診」「在支病」については 在宅療養支援診療所(在支診)とは その概要と動向 ご参照)


●200床以上の大型病院を対象に、在宅医療の患者の様体が急変した際の対応や、入院受け入れを積極的に行う「在宅療養後方支援病院」を新設。

また在宅医療の担当医と在宅療養後方支援病院の医師が共同で往診等を行った場合の、「在宅患者共同診療料」を新設。


●リハビリ等によって入院患者の自宅への早期帰宅を促す病院の取組みに対する評価を引き上げ。

また地域で退院後の患者を受け入れる医療機関の充実をはかるべく、「地域包括ケア病棟入院料」を新設。


●勤務医が主治医として患者を継続的・全人的に診る役割を担っている、地域の小規模診療所・病院を評価。


●24時間対応や重症度の高い患者の受け入れ・終末期ケアを行う「機能強化型訪問看護ステーション」を評価。


●在宅療養患者への訪問歯科診療を中心に行う、歯科診療所を評価。


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在宅医療の主治医(かかりつけ医)の点数を高く設定したり、地域の医療・介護の橋渡し役となる「機能強化型訪問看護ステーション」の重視、あるいは在宅医の活動を後押しすべく「在宅患者共同診療料」や「在宅療養後方支援病院」などの項目の新設からも、「地域包括ケアの一環としての在宅医療」を強く推し進めたいという、国の意図が読み取れますね。


なお今回は「在宅医療の適正化」の名目で行われた、注目すべき改定がありました。

老人ホームなどの介護施設サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)医師が出向き、同一施設内でまとまった数の入居者の診察をする「訪問診療」について、2年前に定められた診療報酬から点数が大幅に引き下げられました。


背景には高い診療報酬が得られることに目をつけた一部の事業者が、介護施設に入りたい高齢者に特定の訪問医の受診を入居条件として義務づけたり、医師にまとまった数の入居者を紹介して手数料を得るような「患者紹介ビジネス」の存在があり、これを正すべく行われた措置とされます。

在宅医療は一定の患者数を確保できれば、効率的に利益を出しやすい側面もあると言われます。この点が悪い方向に利用されたということでしょう。


この改定により、同じ日に同一施設で複数の患者を診たときの訪問診療料や加算が、大きく引き下げられました。

ただし点数の引き下げは全国一律で適用されるため、とりわけ地方でサ高住等に住む入居者を訪問して診ていた医師らが、経営的に大きなダメージを被ったとの報道もされました。


とりわけ遠隔地に患者の家が点在する地方で在宅医療に従事する医師にとって、移動距離が長すぎて診療を効率良く行えないなどの事情から、一ヶ所の介護施設等でまとまった診療を行うことには意義があります。

今回(2014年)の診療報酬削減をきっかけに訪問診療の内容を大幅に削減したり、完全に撤退した診療所も出たことから、このようなマイナス面にも配慮したきめの細かい制度運用が必要、との批判も生じているところです。


2014年の診療報酬改定は、「高度な医療を担う地域の拠点となる大規模病院」と「在宅医療を行う小規模診療所」との機能分担をさらに進めて、地域における医療機関同士のいわば「連携プレー」を促しながら、病院への長期入院を減らし在宅での治療・療養へと振り向けたい、国の政策の具体化と総括できそうです。

最終的な狙いはやはり、「国の医療費総額の削減」でしょう。


患者サイドとしても、医療費の自己負担額の増加という金銭面以外に、訪問医(かかりつけ医)の交代病院への一時的入院介護サービスとの連携といった場面で、今後その影響を具体的に実感する機会が増えてくることでしょう。

診療報酬の改定がもたらす在宅医療への影響に関心を払い、自宅で療養する患者のこれからも予測しながら、先々に備えていく必要がありそうです。


次の記事は「緩和ケアとは~あらゆる病気を対象に、本人の様々な苦痛を取り除く」です。

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