在宅での看取り・救急搬送と治療~家族として備えるべきこと



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在宅医療の終着点は、「よく看取ること」にあると言えるかもしれません。

亡くなる瞬間に共にいるだけでなく、本人が住み慣れた自宅で家族に見守られながら旅立つことが、すでに現代の日本で大変に難しくなっていることは 在宅医療とは~背景にある国の財政負担増、そして人々の思い でもご説明したとおりです。


家族としてきちんと看取りを行なうためには、あらかじめ(少なくとも「終末期」にあることを関係者が認識している段階で)、「やがて迎える死にどう対応するか」についてのコンセンサス(一定の合意)が出来ていなくてはなりません。

「眠るように安らかに亡くなる」ケースもあれば、様態が急変して救急車を呼ばなくてはならないケースもあります。

様態の変化をどう判断すべきか在宅医に相談できる時間的な余裕があるケースもあれば、突然深夜に本人が苦しみだし、誰にも相談する時間がない切迫した状況もまた、あり得るでしょう。

苦しみながらも本人の意識がはっきりしていて、意思表示を口にできるケースもあれば、意識の混濁や認知症等のために家族が本人の意思を確認できない場合もあるでしょう。


終末期の医療は、救急車で病院に運び込んで施す「救命医療」とは異なる面が多々あります。

また体力も免疫力も落ちている病状の終末期に治療を施すことで、残された体力のかなりの部分も奪われてしまいがちです。

家族はどうしても「治療すれば以前の状態にまた回復する」といったイメージを持ちやすいものですが、呼吸困難や肺炎などの合併症を併発することも多く、ケースバイケースではあるものの「終末期においては、治療によって必ずしも一直線に良い方向に進むとは限らない」ことを認識しておく必要があります。


治療ができるのにあえて行わないことは「治療の差し控え」となり、これは治療を施しながら途中でストップする「治療の中断」とは、概念的に異なるものです。

いったん病院に救急搬送して医師が治療を始めてしまうと、そう簡単に「治療の中断」はできなくなります。

病院は治療のために存在する機関ですから、患者を助けるための治療を、本人の意思も医師が確認できないままに中断しては、刑法上の責任を問われる恐れもあるためです。

したがって家族は、本人が「在宅で亡くなる」ことを希望しており、その思いを可能な限り汲んであげたいと思うのならば、日頃から在宅医とも十分に話し合って、万一の時に想定される状況を洗い出しておくべきです。


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ふだんから訪問診療していた担当の在宅医が最期の時に居合わせた場合は、死亡診断書を書くことができます(ただし在宅医療とまったく関係ない死因が想定される場合は例外で、検死の対象となり得ます)。

また治療中の病気を原因として亡くなった場合は、死亡後24時間以上が経過していても、担当の在宅医は死後の診察によって死亡診断書を書くことができると解釈されています。

地域ケアにおける看取り・死に関する医師法の解釈【PDF】(東京都医師会)

但しかかりつけ医と言えど診察の回数や状況次第では、本人の病状の推移を正しく把握しているとも限りません。

最低限の往診にとどまっていたり、あるいは最近別の医師に担当が交代していた場合など、死亡の診断にあたり事件性が無いと断定できず、結局警察医の検死を受けることもあり得ます。

このようなことを避けるためにも、日頃からかかりつけ医・在宅医との間で、きちんとコミュニケーションをとっておくことが大切です。


どのような状況でも、日頃から「本人の病状が現在どの段階にあるのか」「本人の希望はどのようなものか」「担当する在宅医と、万一の対応について納得のいく打ち合わせや相談を行っているか」という話であり、あらかじめ十分な判断材料と心の準備なくしては、万一の際は気が動転して救急車を呼ぶだけの対応となってしまうでしょう。


もちろん本人が在宅死を希望していても、急変時の状態・状況によっては、高度医療機関での治療が絶対に必要な場合もあるでしょう。

結果的に救急車を呼ぶだけの対応になってしまったり、残念ながら病院での治療中に息を引き取ることなども、想定され得ることです。


しかし仮にそうであっても、最終的な状況にたどりつくまでの経過を家族としてどう判断していったか、そしてそれは本人の生前の意思を踏まえ関係者全員がよく話し合って合意した判断の結果であったか否かが、大事です。

一度きりの「人の死」という、最終的な「結果」にいたるまでの「過程(プロセス)」は、本人を看取った後も長い間、家族をはじめ関係する一人一人の記憶に留まり続けることになるからです。


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