診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(1)



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新聞やTVで時おり目にする「診療報酬改定に向けた攻防」「診療報酬改定で変わる医療」といった、見出しの記事。

在宅医療の利用側としては、何となく雰囲気は伝わるものの、診療報酬の改定が自分たちのこれからにどう影響するのか、いま一つピンとこないのではないでしょうか。


診療報酬の改定動向は、「在宅医療のこれから」にも強い影響を及ぼします。

医療もビジネスの一つである以上、「在宅医療が普及していくかどうかは、診療報酬のさじ加減でほとんど決まる」と言っても、過言ではありません。

この診療報酬の基本的な仕組みを理解し、これが調整されていくことで国が在宅医療を政策的にどう導こうとしているかを自分なりに読み解いていくことは、在宅で医療を受ける患者とその家族にとっても、非常に大切なことです。

ここでは診療報酬の基本的な意味合いと、その改定が在宅医療にもたらす影響について解説します。


患者は医療機関から治療を受けたときに医療費を支払っているわけですが、実は病院に費用を支払っているのは「保険を運営する側(保険者)」です。

患者が払う金額(総額の1~3割程度、いわゆる「窓口自己負担」)は、「保険者が病院に支払う金額の、一部を患者が負担する」位置づけなのです。

これが保険の効かない「自由診療」になると、以下で述べる「診療報酬の点数表」に載っていないため、全額(10割)を患者が負担することになるわけですが。


保険者が医療機関に払う金額は、中医協(厚生労働省の諮問機関)が決めたいわば「公定価格」であり、これが「診療報酬」と呼ばれています。診療報酬は医師の技術料となる「本体部分」と、医療材料や薬などの「薬価部分」から成っています。

そしてこの「診療報酬」は、医療機関が患者にサービスを提供した後に支払われる「出来高払い」が原則です(例外として一つの病気にかかる診療報酬が定額に固定されている「包括払い」があり、一部で導入されています)。


「出来高」とは、例えば何回検査や治療を行ったか、どれくらい薬を出したかといった一連の医療行為の積み上げで最終的に金額が決まってくる、ということです。

よって「出来高払い」のもとでは、患者に対して医療行為を行えば行うほど医療機関側の収入(利益)が増えるというのが、基本的なメカニズムです。

(患者側からみると自己負担額が増えるということになりますが、高額療養費制度によって、自己負担限度額[一定の上限額]で止まります。)

高額な医療費を支払ったとき(協会けんぽ)


上で「診療報酬は公定価格」と言いましたが、これは個々の医療行為ごと金額そのものではなく、「点数」で定められています(1点=10円換算)。「医療行為の診療報酬点数×10=価格(円)」ということになります。

これらをズラッとリスト化した診療報酬の「点数表」がありますが、医科だけでも1万数千項目もある、膨大なものです。ただ並べただけでなく、項目によっては一定の加算・減算も加えられ、素人目にはとても近づけない複雑な体系に仕上がっています。


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病院で治療後にお金(自己負担)を払うと、治療の個々の項目と点数が記載された「診療報酬明細書」をもらいますね。

これは2010年度から義務づけられたもので、患者はこれによって、自分がどんな治療を受け医療費として合計いくらかかったのか、その全容および項目の内訳を知ることができるわけです。


患者が受け取るこの「診療報酬明細書」は、医療機関が保険者に診療報酬を請求するときの明細書(「レセプト」と呼ばれます)と100%イコールではありませんが、大枠がほぼ分かるため「レセプト並み明細書」とも呼ばれています。

(どうしてもレセプトの本体が見たい場合は、保険者に開示請求を行って見ることもできます。)


さて、この診療報酬の多い少ないによって、全国津々浦々の医療機関の経営が大きく左右されることは、直感的にお分かりになるでしょう。

診療報酬の点数が高い医療行為は多く行われやすく、逆に低ければ行われにくくなるわけです。

したがって診療報酬の点数を調整することによって、国は政策的に医療機関を一定の方向に誘導できるわけです。

ただし「点数の高い医療行為が、患者にとって必ずしも最善の医療行為とは限らない」ことは、頭の片隅に置いておきたいところです。


「診療報酬の改定」は2年に1度行われますが、病院経営のみならず社会全般に与える影響も大きいことから、その改定時期が近づくと、必然的にマスコミを通じて世間が賑わうことになります。


直近の診療報酬改定は、2014年(平成26年)4月に行われました。

2014年の診療報酬改定では、在宅医療に関わる診療報酬の点数が手厚く設定されたことが大きな特徴となりました。

入院治療から在宅医療への転換」を政策的に強く推し進めたい国の意図が、はっきりと反映されています。


診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(2)では、在宅医療の普及に向けて具体的に診療報酬がどう改定されたのかを見ていきます。


次の記事は「診療報酬改定(2014年度)~在宅医療への影響(2)」です。

ひとつ前の記事は「在宅療養~技術・費用面以外で知っておくべき、2つのこと」です。


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